「銀の匙」というアニメをご存じだろうか?
荒川弘の漫画をアニメ化したものである。舞台は北海道の酪農高校。酪農のあれこれを学ぶ高校生の物語である。
少々ネタバレがあるかもしれないので、読む人は気を付けてほしい。
主人公は頭は良いけれど、中学で挫折した線の細い男子生徒。高校1年生。
畜産、酪農、加工、など農業系のアニメでふんわりしてあったかい空気が全体に漂っている。
ハラハラドキドキのドーパミン系ではなく、オキシトシン系。
第1期を見終わった感想を書いてみたい。
北海道の酪農高校に、逃げるように進学した生徒がいた
主人公のことをここではA君としよう。
A君は勉強での優秀さを求めるエリート家庭で育つ。兄は東大に進学した超優秀な人。常にその兄と比較されていた。あげく受験で挫折。心機一転というよりは、やけくそで、家を出たい一心で酪農高校へ進学した。
親、勉強すべてが嫌になって逃げた。
そのAが土と汗にまみれ、いろいろな家畜の世話を通じて成長していく。
まったく別世界に飛び込んでのAの体験が、まるで自分がしているように錯覚する。
そうそう、牛のふんって大きいんだよね。
匂いも強烈。酪農はきれいごとではすまない。頑張れA。いつしか同化している私がいた。
夢がないことはダメなことなのか?
友人は実家が酪農家でその跡継ぎであるとか、巨大農場の娘だったりとか、獣医を目指すとか夢が定まっている子が多い。酪農に特化した学校なので、やりたいことが明確な人が多い。そりゃそうだ。
その中でAは自分が「夢もない」「親から逃げて進んだだけ」「目的がない」という自分に負い目を感じてる。
親の後を継いで酪農をする予定の友人、「本当は馬の仕事をしたいけど、親に言えない」という悩み。
Aは友人の悩みの相談に乗りたいけど、「夢もない自分には相談にすら乗れない」と自己を過小評価する。何かにつけ気弱で、自分を責める節のあるAを見ていると、私を見ているようでちょっと痛い。
「夢がないこと」はダメなのか?
高校で夢を持ってるほうが珍しい。酪農高校という特殊性が生んだ悩みだ。
Aは悩んでいるが、Aよ、気にすることはない。夢なんて一生かけてみつけるもんだ!って言いたい。その結果見つからない人だって多いもの。それは、それで良いことだと50代の私は思う。アニメだなと。
校長先生の言葉が刺さった。「逃げることは負けではない」
いじけやすいAに校長先生が素敵な言葉を放った。
「A君は逃げることに否定的なようですね。逃げた後に経験したこと、出会った人はどうでしたか?(いろいろすばらしいこともあっただろう?) 生きるために逃げることはありです。逃げ場のない経済動物と君たちは違うんですから。逃げたことをプラスにしてこそ逃げた甲斐があるってもんでしょう」
そんなセリフだった。
良いこと言うなあ・・・
このアニメ、ちょいちょい言葉に響く名言が入っている。
アニメはストーリーに引きこむ力が強いだけに感動する。
そうなんだよ、「逃げること」は負けじゃない。
しかしなんでか知らないけど、負い目に感じて「負け犬根性」になってしまう。「どうせ私なんか・・・」と感じてしまう。
逃げて、そのあと、逃げたことをプラスに変える。プラス変換できたらOKだろう?
振り返ってあの時逃げてよかったと未来の自分が感じるなら、正解だ。
自分の人生を振り返ってみた
私も逃げた人間だ。21年以上勤めた会社が嫌で嫌で、限界まで粘って、なんとかフィニッシュまで耐えて有終の美を決めることができた。
でも、自分の中には煮え切らない気持ちがあった。
選んで円満退職したものの、「やられた」感が残った。(ハラスメントや残業代未払いなど問題てんこ盛り会社だった)このやられた感が逃げた負け犬という負の感情に結びついている。
じゃぁ、今の私はどう思っている?
・・・(今の自分に満足はできないものの・・)
胸を張って「あの時逃げてよかった。」そう言える。
そうかぁ。実は私は逃げをプラスにできたんだ。
自分評価厳しめの私は、このアニメを見てこれに気が付いた。
Aは将来の目標決まったかの質問に「溺れながら死ぬこともできずに、流されているって感じ」と答えていた。それでいい。足掻くことに意味がある、そう思うのは私だけではあるまい。
Aは馬に似ているという。私も馬かも?
Aはまだ逃げをプラスまでは持っていけてない。でも持っていける兆しは感じている。これは2期を見てのお楽しみだ。
Aは馬に似ているという。
馬は神経質な動物で、群れでないといけていけないことを理解している。そのため基本群れを大事にする。馬は臆病で繊細、仲間思いの動物だという。
Aと私は似ている。であれば、私も馬なのかもしれない。(仲間思いなのかな?自覚はない。)
良いね、馬。
美しい動物。癒しの力がある。
自分の新しい良い部分を発見した気がした。
「ブラック企業は逃げてもいい」という言葉に救われた話は、こちらにも書いた。
→ 孤独に生きよ① ブラック企業は逃げてもいい|『孤独に生きよ』を読んで救われた話
失敗を勲章に変える、という話もこちらに書いた。
→ 失敗は勲章だった|『覚悟の磨き方』で変わった私の考え方
同じアニメを見て、もう一つ思い出した問いがある。動物の命を頂くとはどういうことか、という話は、こちらに書いた。
→ 「殺されることがわかってるのかねぇ」|『銀の匙』が思い出させた、50年消えなかった問い
こうした気づきも、私の中では一本の線でつながっている。このブログ全体の考え方はお金の話ばかりじゃない理由|50代おひとり様がこのブログで伝えたいことにまとめている。

