労働基準監督署に労働相談の窓口があることを知っているだろうか?
監督署には普通、監督官が常駐している。
その他に、いじめいやがらせ、退職問題(解雇か否かなど)の民事的問題の相談窓口があることを知っているだろうか?
主たる窓口は労働局になるが、出先機関として監督署にも民事の相談ができる窓口(対応窓口は地域によって多少異なる)がある。
窓口に立つ私
私も、こうした労働相談の窓口に立つことがある。
社会保険労務士として、相談を受ける機会が時々あるのだ。
労働相談は非常に件数が多い。
ひっきりなしの様相の日もある。
そんなある日、若い女性が相談をしに私の前に座った。その日は相談担当が少なく手いっぱいだったためだ。
会社とかなりすれ違いがあった様子だ。
いろいろあって塞ぎがちになっている状態も感じられた。
彼女は我慢しっぱなしで自分から声を発しにくい。そんな様子が手に取るように分かった。
ずっとがまんしてきたんだね。
私は心の中でつぶやいていた。
いや、次の瞬間声に出していた。
「・・・」彼女は涙を流していた。
昔の自分を見ているようだった
私はブラック零細企業で、私なりに耐えて働いてきたことは前にも書いた(私は21年怒っていた|でも今は少し感謝している)。
その時の私を見ているようだった。
会社に対する信頼がない。
会社が法律をわかっていない。
それを相談できるところもない。
ただ、我慢するだけ。
ことあるたびに唇をかみしめてがまんするだけ。
小さい不満がちりのように静かにたまっていく。
たまっていく。
会社に意見するときは辞めるときって考えていたっけ。
彼女は過去の私と同じ状況だった。
違うのは行動に移して、ここに来ているということ。
彼女の後ろに過去の私が佇んでいた。
ブラック企業にいた頃、誰にも相談できなかった
私は21年ほど勤めた中で、19年目あたりに天敵おやじが現れた。
そこから2年ほど耐えた頃、ちょうど転職が決まりかけていたタイミングで、怒鳴られる出来事があった。
そのまま退職を決断し、転職した。
これができた。これ僥倖。
最後は思いっきり嫌な思いもしたけど、あの人物の出現で退職を決断できたのは有難かった。
あの会社を去ったあと私は2度と唇をかむことはなくなった。
この相談者も数年、ずっと我慢してきた。
いつもつらい思いをしてきた。だからそれを理解してもらえると涙が出たんだ。
私も辛かった。誰にも相談しなかった。
しても無駄だと思っていた。自分が辞めるしかないって考えていた。
それはなまじ外れではないと今でも思う。
去るしか方法がない・・・これも往々にしてあることだからだ。
しかし解決はできないかもしれないが、相談できる窓口はあった。
この窓口の存在を私は知らなかった。しっていても相談しなかっただろうな。
労働局や監督署、敷居が高い。私はそう感じていたから。
今なら、あの時の自分に言えること
目の前の彼女に対して、話を聞いた後私は聞いた。
「状況は分かった。辛いのも理解した。そのうえであなたはこれからどうしたいですか?」
「・・・辞めたくありません」という。
であれば、会社との行き違いに対してまずは自分で話をしてもらうしかない。
これはやりにくいだろうしやりたくないだろうなと思いながら。
でもそこからしか始まらない。
その理解を促した。
第3者にはできることとできないことがある。
自分が辞めたくないのであれば、その目的を達するために何をするべきなのか話をした。
一人唇をかみしめた過去の私にも、私は同じことを言うだろう。
それで会社と対峙するかどうかは、自分で決めることだ。
対峙してさらに状況が悪化することもあるだろうし、良くなることもあるだろう。
それは相手次第、話し合いの方向次第だから。
相談できる場所があるというだけで、救われる人がいる
過去の私はこの話を聞いてどう思うだろうか?
なんだ、結局自分で動くしかないんだ。そう思うかもしれない。
でも、話を聞いてもらって、法的に方法がこれしかない、これが最初の一歩だと教えてもらえれば気持ちは軽くなったのではないか?
会社に私から改善を求めるかどうかは別として、方向性は示され見通しがきくようにはなると思う。
話を聞いてもらい、一般的ではあるがこうする方法もありますよ、と言ってもらえる。
それだけで気持ちが明るくなる人もいると思う。
私は労働相談に対応するとき、相談者の願いが一番かなう方向性を法律面で指し示すことを大事に考えている。
そして時に自分と似た相談者に出くわすとき、「大丈夫、あなたの人生終わったわけじゃない。早く見切ったほうがいいこともあるよ。自分で考えて自分で早く決断して」いつも心の中で呟いている。
問題にぶち当たっても終わりではない
会社ともめてつらい思いをしていても、人生それで終わりじゃないのだ。
それを含めて人生の一幕なんだ。
幕を展開させるのは、監督署でも労働局でも弁護士でも社会保険労務士でもない。
あなた自身だ。
裁判官の判断を仰ぐこともいいだろう。
そのための司法制度。
それを選ぶのも選ばないのもあなたの選択だ。
そして何もせず私のように「立つ鳥跡を濁さず」でも良い。
あなたが良いのであれば良いのである。
相談窓口は問題に方向性を示してくれる。
あなたと会社以外の第3者の意見を無料で聞ける窓口、これは心強いと思わないだろうか?
もし、職場の人間関係などで思い詰めているのであれば、解決にはならないかもしれない。それでも電話一本、最寄りの労働局の総合労働相談コーナーにかけてみてはいかがだろうか?
ちょっとした光が見えてくるかもしれない。
念のため書いておくと、私はこのブログを通じて個別の労働相談を受け付けているわけではない。困ったときは、正式な窓口に頼ってほしい。
こうした気づきも、私の中では一本の線でつながっている。このブログ全体の考え方はお金の話ばかりじゃない理由|50代おひとり様がこのブログで伝えたいことにまとめている。

